追憶 – Remembering the Past…

uo.comに9月26日付けで掲載された“Remembering the Past…”の拙訳です。
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ヘクルスは二つのグラスにワインを注ぎ、それぞれを二人の王に手渡した。ブラックソーン王が頷く間、ロード・ブリティッシュは道化に向かって微笑んだ。そしてふたりの王は再び会話に戻った。

「それにしてもあなたがニスタルの手を借りずに戻って来られたのは驚くべきことだと言わねばなるまい。こんなにも長い間どこにいたのかね?なぜこんなにも時間がかかったのかね?」

ロード・ブリティッシュはワインをひと口飲むとグラスを置き、口を開く前に五本の指をわずかに尖らせるようなしぐさをした。

「わたしは……皆が知るように新たな冒険の旅へと自分を追いやっていたんだ。私は宇宙へ旅立った。地球上のあらゆる束縛から逃れ、本当の自由とは何かを感じながらね。そしていっしょには来れなかったが、愛する人と……決して壊れることのない絆を手に入れた。振り返ってみれば、まったく新しく深遠な体験として、徳の在り方に対する自問や思惑や思慮が自分の中によみがえって来ていることに気づいたよ。直接的に不思議な体験をすることでね……そう、特に新たな命をこの世にもたらすことができた時には。それらを通じてわたしは不死の宝珠の欠片を手に入れた……それらは今は脅かされることなくニスタルとともにある。私はブリタニアへ帰還の時がやって来たことを知った。だが世界は苦悩しているように見えた。わたしが城の上の歩道を歩いていた時に見た、まさに去ろうとしていたあの男は、あれはサー・デュプレかね?」

ブラックソーン王は友の顔が王を楽しませようと冒険について語る間、あふれんばかりの情熱に輝くのを見て明るい気持ちになった。

「そうだ……。彼だ。ミナックスのパワーの復活に直面して彼は自身を厳しいまでに追い込んでいた。どうにか我々はミナックスの軍勢を押し返したように見えたが……彼女はシャンティという新たな部下を得て、不死の宝珠の欠片を用いて灯台から暴徒を呼び出したんだ。」

ブラックソーン王はワインをひと口飲むと沈黙し、微かな尊厳をその声ににじませながら続けた。

「現れた古き敵は彼女だけではない。再び解き放たれたエクソダスもまた……デュプレと彼の騎士と破片世界の冒険者たちが彼を隔離したが、かつてわたしがしたように彼を完全に亡き者にすることは不可能なようだった。我々はアノンの協力を求めたが、世界とメイジ評議会を共生させようという彼の願いと裏腹に、あまりに長い孤独な時間は彼をそれよりはるかにエキセントリックな狂気へと追いやってしまったようだ……そしてもしその報告が信頼に足るものであるとすれば、メイジ評議会は自ら多大な犠牲を払ったミナックスの残党に散り散りにさせられたはずだ。フェルッカは混乱を極め、血も涙もない戦いと殺戮とが日夜繰り広げられているようだ。」

ブラックソーン王がワインをもうひと口飲むと同時に悲しげな微笑がの唇の端に浮かんだ。

「残念ながら君はパレードのために最適な時期に来たとは言い難い。」

ロード・ブリティッシュは頷くと同時に表情は厳しいものになり、こちらに体を傾けた。

「まだ我々にできることはあるはずだ。」

* * *

石壁に投げつけられたゴブレットが激しい音をたて、メッセンジャーは彼女の怒りから逃れるように後ずさった。

「うそおっしゃい!」

シャンティは部屋の角に立ちつくし、スパイとミナックスの間で繰り広げられる出来事をただ見つめていた。

「し、しかし、レ、レディ・ミナックス、これは噂話ではないのです……わたしはこの目で見たんです。デュプレが城を去るほんの少し前に、彼が城に入って行くのを。あなた様がデュプレを見張れとおっしゃって、我々がどうやって……。」

「このまぬけが!騎士どもが最大の脅威だって言うのかい?あんなのは小うるさくてイライラさせるだけで、虫みたいにひねりつぶすなんてわけないことなのに、お前はロード・ブリティッシュを目の前にしてなんで殺っちまわないんだい!」

「あっしは城の下にいたんで……そこには呪文が張られて……。」

ミナックスの手が男の頬を打ちつけ、何かが割れる鋭い音があたりに響くと同時に、彼女の爪が男の顔に食い込んだのであろう、小さな血痕を残して男が床に転がった。

「言い訳は聞きたくないわ。畜生め。行け。今すぐに。あたしの気が変わる前に……すぐにアノンを連れてよこして!無駄にしてる時間はないわ!」

* * *

「そしてアララトもよみがえった……やっかいだ、しかし、魅惑的だ。」

ロード・ブリティッシュは空のグラスを置いた。

「それらはまるですべてのピースが新たな政権のためにリセットされたように見える。いずれもまだ混沌の中にあり、間違った場所にあるように見えようとも。敵は王国を包囲し、そして……。」

ロード・ブリティッシュは沈黙し、顛末を聞いたことで少しだけまゆをひそめた。ブラックソーン王は立ち上がり、窓から城の中庭を見つめた。

「どうやら噂が広がるのは早いようだ……人々が君が戻ったという噂の真偽を確かめようと詰めかけているよ。カンタブリジアン(ロード・ブリティッシュ)、暴徒が襲撃する前に、彼らの願を叶えてやった方がよさそうだ。」

ブラックソーン王はそう告げると、玉座の間へと向かった。

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